20180528

ゴッサムシティ、京都・大阪。

 

ため息をついてグラスのシングルモルトを胃に流し込むような素振りをするも、その実それは単に氷が溶けて薄くなったアイスコーヒーである、そんな拍子抜けの日々。まったく、ローレンス・ブロックの世界観には程遠い。

 

しかし、なんとまあ都会には喫茶店が多いものか。恥ずかしながら、喫茶店などというものを10代の僕は知らなかったのだ。

 

もちろん、本当に知らなかったわけではなく、ただそれは、漫画とか映画とかの中だけだと思ってたのだ。

 

香川に珈琲屋などない。黒い水が食卓に置いてあったらまず麺つゆだと思え。

 

そんなものだから、京都・大阪に来た時の衝撃たるや。そこら中に珈琲屋。高校生が黒豆の研ぎ汁をすすっておる。オシャンティ。

 

自らの田舎者具合を激しく恥じたものである。

 

都会では学生は部活などしないという。部活なんぞはそこそこに近くの名画座茶店でハイカラな話題に花咲かせるのである。いとをかし。

 

それにひきかえ、田舎は部活に精を出す。朝練、昼練、放課後に休日。なんでそこまでと思ったものだが、あれはそうでもしないと田舎ではやることがなさすぎて退屈で死んでしまうからなのだなあ。

 

結局、僕が部活動で学んだものは帯の結び方とシェイクハンドくらいだったのだ。

コーヒーの匂いをかぐとそんな気分になってしまうのです。

 

そんな香川の実家も、少し色づいたのか、久しぶりに帰ると木製のコーヒーミルが台所にあった。

 

小さくも風情のあるコーヒーミル。少しはこんな辺境の島国にも文明開化の波が、といたく感動したものである。

 

『最近買ったのよ。あなたもコーヒー飲む?』

『いただこうかな』

 

 

驚愕するほどに薄かった。