20180611

流石にちょっとマズいんじゃないかと思う。

 

今年から自分もそれなりに先輩になったこともあり、後輩の数も増えてきたのだけど、後輩の言葉遣いや接し方をみると、少なからずイラッとすることが多い気がする。あくまで自分の気が短くなったとか、自分に対してだけというならいいんですけど。よくないんですけど。

 

思うのが、敬語というものが一体どういう意味を持っているのかをあまりわかっていない人が多いのではないかということなのです。

 

敬語とは人に対して敬意や尊敬を示すから使うのではないということです。もちろん、そういう側面も存在する。問題はそれは敬語の一側面だということなんです。

 

原始の頃、人が集まって暮らしているころ、誰が誰に対して敬語を使っていたのか。

 

力の強い者? そうではないでしょう。

 

僕はそれは神だったと思います。

 

光を照らし、恵みの雨を与え、実りを授ける。そういったこの世の有難いものに対し、人々は神の存在を感じてそれに敬意の念を払った。そしてそれをなんとかして神に伝えるべく敬語という神に対して話しかける言葉を作った。僕はそう思ってます。

 

しかし、神は決して実りや恵みだけを与えるのではない。神の行いには地震津波や洪水などの天災も含まれています。

 

人々が必死になって育ててきた作物を飲み込み、家々を焼き、人を飲み込む。そういった仕打ちを神は人間に時として下すのです。

 

そういった際にも、人々は神に祈る。その怒りをどうか鎮めたまえと話しかけるのです。

 

畏怖という言葉がありますね。これはどちらの漢字もおそろしいということを意味します。しかしこの言葉にはおそろしいということだけでなく敬い奉る意味もあります。

 

その理由はもうわかりますよね。話しかけている相手がただ尊敬に値するということだけでなく、自らの生殺与奪を握っているというその畏れに対し僕たちは敬語を用いるのです。

 

もういまいち分からないという方はこういう場合を考えていただければ。電車に乗ったらヤクザのような格好の男性が、自分に向かってドカドカと近づき、顔を睨みつけて『何見とるんや、コラ』と言ってきたら。

 

『いや、見てませんよ』

 

って言いますよね。

 

もちろん、ここで敬語を使っているのはヤクザを尊敬してるからではありません。怖いからです。相手を怒らせると何があるかわからないから敬語を用いるのです。

 

敬語には敬いと共に畏れの念が込められているのです。

 

だから礼を失するということは、非常に恐ろしいことです。何をするのか分からないから。少なくとも、相手が本気で怒れば自らが非常にマズいことになることが予想される場合、失礼を働くことはとてもマズい。

 

けれど、最近世間を見るとそうではないみたいですね。自分が敬いの念を持っていない人に対しては敬語を使わない。使ってもバカにしてることが分かる使い方をします。結構わかりますよ、そういうの。使った本人がそんなこと思ってないって言ったってダメです。失礼はいつも自分がどう発したかではなく、相手がどう受け取ったかで決まるのですから。

 

だから失礼を働くことはやめておいたほうがいい。その場ではいいかもしれませんけど、そういうことは積もっていきます。自分が余裕のあるときはいいんです。けど、もし余裕がなくなって誰かを頼らなければならない時、それは如実に出てきます。困った時にざまあみろと手のひらを返されます。それは相手がそんなつもりなくてもです。相手は、イヤ助けてあげたいんだけどねとか、ちょっと余裕なくてさと言うと思います。嘘ではないんです。ただ、困っている人が自分に礼を尽くしてくれた人なら相手は少し無理をしてでも助けてくれます。

 

敬うということは、畏れの念を含んでいる。そのことが段々と薄れているように思えます。

 

その一方で、ああこの人はこの方をとても尊敬しておられるのだなという方も時々見かけます。最近、ある先生が、その先生のお師匠さんとお話する様子を拝見する機会がありました。お師匠さんに話しかける先生のその姿はとても美しかったことを覚えています。何かしら温かいものを感じるのですね。それを見て、ああ自分もこういう風に先生を敬いたい、もし叶うならば自分の後の代にもこの姿を伝えてあげたいと思う。その思いが人間に本当の敬いを生じさせ、行動としてあらわすようになるのだと思います。ぜひ私もそうなりたい。

 

なのにも関わらず、思い起こしてみればなんとまぁ自分は礼を失した行動をしてきているのでしょう。本当に申し訳ないと思います。こんな場で全くすみませんが、諸先生方には今まで大変失礼を働きました。若気の至りとは言いますが、失礼千万ご迷惑の限りを尽くしたと思います。不肖の弟子ではございますが、どうかこれからも先生方からのご指導いただければと思います。どうか、よろしくお願い致します。